ESH(EHS)とは
ESHとは環境及び労働安全衛生を一体としてマネジメントする手法です。Environmental, Safety and Healthの頭文字をとった言葉です。EHSやHSEと呼ぶ企業もありますが同義です。
日本においては、比較的新しい概念ですが、欧米の特にグローバル企業では、古くから用いられている管理手法です。
環境と労働安全衛生を一体管理するのには理由があります。例えば、騒音や化学物質は事業所内で社員が暴露されれば労働安全衛生問題となり、敷地の外で住民が暴露されれば環境問題となります。発生源は同一ですので、ESHとしてマネジメントするのが合理的なのです。
なぜESH(EHS)が注目されているのか
近年では、日本企業でもESH(EHS)が注目され、ESHマネジメントを導入する企業が増えています。
その背景には大きく二つの理由があります。
- 1.グローバル企業のCSR調達
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大きな理由は、顧客であるグローバル企業からの要求があるためです。多くのグローバル企業は、サプライチェーンにおいてCSR(企業の社会的責任)を果たさないことによるダメージを回避するためにサプライヤーに対するCSR調達基準を定め、厳しいCSR監査を実施しています。そのCSR調達基準の項目は次のとおりです。
CSR調達基準 = ESH(EHS) + 労働・倫理 + マネジメントシステム
Apple、NIKEなどの先進企業や、電子業界などの業界基準であるRBA (Responsible Business Alliance:責任ある企業同盟、旧EICC)、製薬業界の調達基準であるPSCI(Pharmaceutical Supply Chain Initiative:製薬業界サプライチェーンイニシアティブ)など、皆同様にESHを求めているのです。
- 2.ISO 14001、ISO 45001の共通化
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多くの企業がISO 14001の認証を取得しています。また、2018年3月には労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格ISO 45001が誕生しました。これらのマネジメントシステム規格は、共通のテンプレート(附属書SL:上位構造基準、共通テキスト、共通用語及び定義)に従い作成されているため、統合マネジメントシステムの構築と運用が容易になりました。重複したマネジメントを避けるためにESH(EHS)統合マネジメントシステムが注目されています。
ESHのあるべき姿とは
日本企業のESH(EHS)は、単にISO 14001とISO 45001に基づくマネジメントシステムの統合に過ぎないケースが多いのですが、本来あるべきESHとは異なります。
ESHにおいて、重要なのはGRC (ガバナンス:Governance・リスク:Risk・コンプライアンス:Compliance)です。
- Governance
- 特に労働安全衛生に関しては労働安全衛生法に基づき事業所単位の管理が行われてきました。事業所任せにせず、企業やグループとしてのガバナンスが重要です。
- Risk management
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CSRのテーマは、次の2点です。
1. 自社の技術や資源を活用して社会の課題を解決する共通価値の創造(CSV)
2. 企業の潜在的悪影響の回避、低減
このうちESHで特に重要なのは「2」のリスク低減です。 - Compliance
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ESHのベースとなるのはコンプライアンス(法令等の遵守)です。すべての企業や業界のCSR基準は、コンプライアンスが大前提となっています。
ESH(EHS)を適切にマネジメントしないと、企業は大きな代償を払うことになります。GRCを強化したESH(EHS)マネジメントが求められています。