「油回収を最優先に」 佐賀鉄工所「多大な迷惑」謝罪
■■ ESHの解決策
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2019.9.4 No.478
企業の環境&安全衛生、ISO14001、ISO45001の担当者、管理責任者を
支援するサポーターメールマガジン
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◆ご挨拶
暑さと涼しさを繰り返しながら、季節は少しずつ秋に向かっています。日が暮
れるのも早くなり、何となく寂しい気分になるのは私だけでしょうか?
さて、環境特集でも取り上げていますが、先週は佐賀を中心として大規模な豪
雨災害が発生してしまいました。通常の水害に加えて油の流出事故も重なり、
対応は困難を極めています。影響がどこまで拡がってしまうのか想像もできま
せんが、まずは住民の皆様の安全と一日も早く日常生活が取り戻せることを祈
らずにはいられません。
昨日は横浜市でも集中豪雨による被害がありました。日本列島には台風も近づ
いています。事前に避難場所などを確認するなど、くれぐれも安全を優先して
行動しましょう。(門)
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■環境不祥事の教訓
◆「油回収を最優先に」 佐賀鉄工所「多大な迷惑」謝罪(8/31)
大雨による冠水の影響で杵島郡大町町の工場から油が流出した佐賀鉄工所は3
0日、報道機関の取材に応じ、「多大な迷惑をかけて申し訳ない」と謝罪した。
住民への賠償については「まだ考えられる状況にない」とし、油の回収を最優
先する考えを示した。
流出した油は、鉄に強度を持たせるため、冷却する工程で使う熱処理用の油
「焼入油(クエンチオイル)」。同社の常務取締役は「油は不燃性だが、付着
したら皮膚が変色する可能性がある」と説明。人体への影響については「低い
とみている」とした。
同工場では28日午前5時ごろ、8つの油槽がある建物が浸水。当時は夜勤の
従業員7人が勤務、排水ポンプを2台設置していた。ただ、土のう積みなどの
作業は水位が上がり始めてから取りかかっており「対応が遅れたのは確か」
(工場長)と振り返る。部品を油槽に落とし込む形で冷却しており、24時間
稼働しているため、油槽にふたはないという。油槽は床下3メートルのところ
に設置、建物への浸水後、油槽に水が流れ込み油があふれ出した。
1990年7月の大雨時にも同工場から油が流出した。この事案を踏まえて、
高さ3.5メートル、横5メートルの可動式の重量シャッターを3台設置、油
槽がある建物を数十センチかさ上げするなどの対策を取っていた。常務は
「(住民の方が)少しでも早く生活を取り戻せるよう努力している。対策を講
じていたが想定を超える雨で、より強固な防災対応をしておくべきだった」と
話した。
(佐賀新聞LIVE)
◆解説
ニュースで大きく報じられている佐賀豪雨の油流出事故、多くの方はなぜ?と
思っているのではないでしょうか。
最初はタンクからの重油の流出だと思ったのですが、全く異なっていました。
熱処理(焼入れ焼き戻し)用の油の角型槽で、上部はクレーンで部品を出し入
れするために開放となっている槽です。
800度以上に熱した金属を高温状態から油にどぶ漬けして急冷させる熱処理槽
で、燃えてしまってはまずいので不燃性の油です。
同社は、高機能ボルトのトップメーカーで、多くの自動車メーカーを顧客に持
ち、ISO14001はもちろんIATF16949の認証も取得する地元の優良企業だそうです。
流出量は約5万リットル(50m3)です。1990年の流出事故を経験し、建物を数
十センチかさ上げしたとのことですが、それでもなお床下に油槽を設置したこ
とは残念です。
もちろん、これほどの豪雨は”想定外”だとは思いますが、河川の近くに工場
が立地している状況で、近年の気候変動による豪雨多発を受け、少なくとも
ISO14001における「課題」や「リスク」には採りあげてハード・ソフト両面の
対策はしておく必要があったと考えます。(実際にどうしていたかは不明で
す)
油や化学物質を取扱う多くの企業にとっては教訓とすべき事例です。
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■労働災害の真相
◆火災時の「盲点」電動シャッター 安全対策義務明記の条文なし (8/25)
4人が死亡した豊島繊維(福井県永平寺町)の工場火災時に停電で作動しな
かった電動シャッターについて、関係法令に非常時の安全対策義務を明記した
条文はなく、法の“盲点”となっていることが厚生労働省福井労働局への取材
で分かった。同局は、福井県内企業の多くで非常時の対策が取られていない可
能性があるとして、避難経路の確認や手動ドアの併設などの対策を取るよう指
導し8月21日、製造業などに自主点検表を送付した。
電動シャッターは、外気遮断などの目的で工場の資材搬入口や従業員通用口に
設置され、ボタン式やセンサー式がある。豊島繊維では、全焼した二つの工場
棟を結ぶ三つの通路にいずれもセンサー式のビニール製シートシャッターが
あった。火災後、同社は「シャッターの一部は閉じたままの状態だった。故障
はしていなかったが、おそらく停電で動かなかった」との認識を示している。
「労働安全衛生法など関係法令に、電動シャッターの停電時などの安全対策義
務を明記した条文はない。法の盲点だった」。福井労働局の地方産業安全専門
官は打ち明ける。「平常時は、問題なくシャッターを通れるため企業側も見逃
しがち。豊島繊維の火災を受け、今後は『壁』として対策を取らないといけな
い」と続けた。
同局は、豊島繊維火災など県内での死亡労働災害の急増を受け7、8月を「労
災防止緊急対策強化期間」と定め、業界団体に対し事故防止に向けた安全対策
の徹底を要請。電動シャッター関連の対策も強く求めている。
具体的には▽電動シャッター全てが閉まった状態での避難経路の確認▽シャッ
ター横に手動式ドアを設置する▽人がはい出られるくらいの隙間を常時開けて
おく-など。21日には、製造業を中心に、設置状況や対策の有無の確認を依
頼する自主点検表を送付した。
火災を受け、一部の企業では対策に乗り出している。本社工場の2カ所に電動
シャッターを設けている清川メッキ工業(福井市)は、シャッターを閉め切り
状態にする夜間でも、従業員が手動でシャッターを開けられるよう、高さ約3
メートルにある電動ロック解除のレバーにひもを取り付けた。清川卓二専務は
「豊島繊維の火災はとても人ごとではない。焦ったら普段できることもできな
くなる」として、非常時の対応について社員に周知を図っている。
【豊島繊維火災】6月20日午後2時ごろ出火、永平寺町松岡石舟のいずれも
平屋建ての工場3棟と、技能実習生の寮を兼ねた3階建て事務所1棟を全焼し、
約7時間15分後に鎮火した。ベトナム人実習生1人を含む従業員の男女4人
が死亡、4人が軽傷を負った。焼失面積は延べ約3460平方メートル。県警
や消防庁消防研究センターなどが出火原因を調べている。
(福井新聞)
◆解説
いわゆる「高速シャッター」に遮られ、4名の方が亡くなった火災に関する続
報です。
メルマガ No.474(2019.7.3)で特集していますのでご参照ください。
この記事では、清川メッキ工業という企業の電動シャッターへの対策が紹介さ
れています。同社は社員290名の中堅企業です。とはいえ、独自技術で業績も
高く、数々の受賞歴を持つ優良企業です。
実は同社は「日本で一番大切にしたい会社大賞 中小企業庁長官賞」※も受賞
している社員をとても大切にしている会社でもあります。
社員を大切にしている姿勢の表れとして、他社の災害事例に迅速に対応する姿
勢には頭が下がります。
本メールマガジンの読者企業でも、メルマガで紹介した災害事例に対して類似
災害予防の見直しをしておられる企業が少なからずおられます。メルマガの継
続発行には相当の労力を要しますが、有効活用してくださる読者様の存在が弊
社のエネルギーになっていることを改めてお礼申しあげます。
※
同賞は、ベストセラー「日本で一番大切にしたい会社」の著者、坂本光司氏
が会長を務める”人を大切にする経営学会”が運営している表彰制度です。
正しいことを正しく行っている企業」に光を当て、人を大切にする会社を増や
してゆくことが目的です。
応募資格は、過去5年以上にわたって、次の6つの条件に全て該当しているこ
とで、審査では各分野の専門家が応募企業を訪問する厳格なものです。
(1) 希望退職者の募集など人員整理(リストラ)をしていない
(2) 仕入先や協力企業に対し一方的なコストダウン等していない
(3) 重大な労働災害等を発生させていない
(4) 障がい者雇用は法定雇用率以上である
(5) 営業利益・経常利益ともに黒字(除くNPO法人など非営利組織)
(6) 下請代金支払い遅延防止法など法令違反をしていない
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◆本日発行「ESHエキスパート」の記事紹介
■復活!今日の言霊
自分の気持ちを話さなかったら始まらないことってすごくいっぱいある
■新着情報
平成30年「労働安全衛生調査(実態調査)」結果の公表
■環境不祥事の教訓
より詳細な解説と参考事例紹介
■労働災害の真相
より詳細な解説とベストプラクティス紹介
■環境事故・ニュースレポート
全国の事故・事件情報 3件
■労働災害レポート
全国の労働災害・書類送検情報 18件
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(2回/月:第一、第三水曜日発行)
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